ドラキュラには実在のモデルがいた!?
夜になると死体がよみがえり、眠っている人間に忍び寄ってその生き血をすする。
この吸血鬼伝説が西ヨーロッパの人たちに知られるようになったのは、16世紀のこと。
私たちになじみが深い「ドラキュラ伯爵」の話も、その吸血鬼伝説の一つです。
舞台は、ルーマニアの辺鄙な地方で、誰も住まない古城のかつての城主が主人公。
夜になると柩から出て、吸血コウモリに変身して生き血をすすり回るというストーリーです。
数多い吸血鬼伝説の中でも、これには「いかにも」と思わせるリアリティがあります。
ところが、本来の吸血鬼伝説は、吸血コウモリとは無関係だったといいます。
現実には、吸血コウモリはもともとヨーロッパには棲息せず、18世紀のはじめに中央アメリカや南アメリカで発見され、はじめてその存在が知られたものです。
だから、16世紀のヨーロッパに残された話に出てくるなんてあり得ないはず。
ドラキュラの伝説は、18世紀以降に書き変えられた可能性があるということです。
けれども、吸血コウモリの存在は知られなくても想像することは可能だったはずです。
果たして、書き変えられたものだと決めつけていいのかどうか、疑問の残るところです。
ところで、このドラキュラという名ですが、これはルーマニア語で、「悪魔」や「ドラゴン」を意味するあだ名。
こんなすごいあだ名をつけられた人物は、15世紀の半ばに実在した南部ルーマニアの支配者、ヴラド三世でした。
敵や裏切り者を生きたまま杭に串刺しにするという残虐きわまりない行為を行ったためで、それが吸血鬼伝説と結びついたのだろうとされています。