くしゃみは「死の前兆」
急にくしゃみが出るようになると、せいぜい「風邪のひき始め」と思うぐらいで、たいして気に留めることもありません。
ところが昔は、これがとても不吉なこととして恐れられていたのです。
医学や病気の知識が現代よりずっと乏しい時代のことです。
突然、大声で「ハックション!」と出るくしゃみは、何かモノノケに憑りつかれたようで、不気味でそら恐ろしいものだったのかもしれません。
それに医療技術も発達していなかったために、くしゃみをしていた人が風邪をこじらせて死亡することも多かったのでしょう。
そんなことから、くしゃみをすると一緒に霊魂が飛び出してしまい、死に至ると信じられていたようです。
では、そんな恐ろしいくしゃみをしてしまったとき、昔の人たちはどうしたのでしょう。
鎌倉時代に書かれた随筆「徒然草」には、尼が「みちすがら『くさめ、くさめ』と言ひもて行きければ」とあります。
くしゃみが出て大変だというので「くさめ、くさめ」と災い除けのまじないをしながら尼さんが歩いていったという意味です。
これでわかるように、ひたすら呪文を唱え、死が襲ってこないように祈っていました。
くさめは休息命が訛ったもの、そして、このくさめが変化して、現在のくしゃみという言葉になったという説があります。