海の邪魔者アカモクががん予防の救世主になる?
アカモクは海藻の一種で、主に秋田県や山形県、新潟県、石川県などの北日本の日本海側で、ご飯にかけたり和え物や汁物の具として利用されてきました。
秋田県では「ギバサ」という呼び方で、ネバネバとした粘りが好まれています。
しかしこれらの地域以外でもアカモクは、日本沿岸の浅瀬に広く自生しています。
生命力も強く、5~7メートルもの大きさに育ちます。
以前、アカモクは全国の漁業関係者から「ゴミ」扱いされる存在でした。
漁船のモーターにからまったり、昆布の刺し網やカキの養殖施設にからみついたり、養殖ワカメの品質を落としたりするため、漁師さんたちにとって厄介者でした。
地方によっては「ジャマモク」「クソタレモク」とさんざんな呼ばれようでした。
食用に利用する習慣のない地方では、せいぜい畑の肥料にされるくらいしか利用されていませんでした。
ところが、そんな「海のゴミ」が、2017年、大ブレイクしました。
きっかけはテレビの健康情報番組で「アカモクには花粉症予防効果がある」「スーパー海藻ではないか」などと健康増進効果を紹介されたことでした。
「アカモクなんて海藻があるとは初めて知った」という人たちが食品店やスーパー、あるいは通販でアカモクに殺到しました。
こうしてわずかに流通していたアカモク製品は売り切れ、品切れが続出したのです。
大手和食チェーンでは、早速アカモク料理やアカモクを使った雑炊を提供し始めるなどしています。
しかし、実はアカモクの有効成分とされている「フコイダン」や「フコキサンチン」という成分については、もっと早くからその効能は伝えられていました。
フコイダンは、アカモクだけでなくメカブやワカメなどの海藻にもあるネバネバ成分で「水溶性食物繊維」が含まれています。
近年、がん予防効果が期待できると注目されています。
もともとは海中で、海藻が砂などにより傷ついたところをなおしたり、雑菌を防ぐなど自らを守るための成分だそうです。
一方、アカモクと同様に褐色をしたメカブ、昆布、モズク、ヒジキなどには「フコキサンチン」という色素が含まれていて、これに抗腫瘍効果や脂肪燃焼効果があるとされてきました。
アカモクのフコイダンやフコキサンチンの含有量は、他の海藻に比べて圧倒的に多いのが特徴です。
1996年、アメリカのJFKメディカルセンターは、フコイダンのがん予防効果について報告しています。
それによると、フコイダンが本来死なないはずのがん細胞が自滅する「アポトーシス」をもたらすということでした。
また、1998年に富山大学の林利光教授は、アカモクそのものの効果について日本薬学学会で発表しました。
それによると、アカミクのエキスが、試験管内でエイズウイルスや単純ヘルペスウイルスの増殖を抑えたとのことでした。
この報告以来、全国の大学や研究機関で、アカモクの成分に対する研究が活発化していきました。
その後、花粉症などのアレルギー疾患の症状を緩和する効果、内臓脂肪の燃焼効果、便秘の改善・予防の効果、血糖値の上昇を緩やかにして肥満や糖尿病を予防する効果などが報告されています。
アカモクのネバネバでシャキシャキした歯ごたえは、グルメの間でも評判がいいようです。
おいしく食べてがんの予防ができる手軽な食材として、今後ますますブレイクするかもしれません。
[surfing_su_box_ex title="アカモク"]褐藻網ヒバマタ目ホンダワラ科に属する1年生の海藻。 秋から冬にかけて成長し、4~7メートルの長さにまで達する。 雄雌異株。[/surfing_su_box_ex]
[surfing_su_box_ex title="水溶性食物繊維"]食物繊維は、水に溶ける「水溶性」と、水に溶けにくい「不溶性」の2種類がある。 「水溶性食物繊維」は腸内で粘着物質となり、ゆっくり移動することで、お腹がすきにくくなるほか、食べすぎを防ぐ。 また、糖質の吸収をゆるやかにして、食後血糖値の急激な上昇を抑える他、腸内環境を改善し、整腸効果がる。 もう一つの「不溶性食物繊維」は、腸内で水分を吸いながら膨らみ、腸の活動を活発にして便の嵩を増し、有害物質を体外へ排出する。 大腸がんの予防効果がある。[/surfing_su_box_ex]