ビールのホップにはがん予防効果があるの?

ビールの発祥は紀元前3500~3000年ころのメソポタミア文明ではないかというのが定説ですが、紀元前7000年頃から作られていたのではないかと唱える人もいます。

これよりも時代は少し後にですが、古代エジプトでもビールが作られていました。

「液体のパン」と呼ばれ、病気の予防や治療に使われていたようです。

 

このようにビールは健康に役立つという考え方は古くからありました。

ビールの原料となる酵母には、天然のビタミンやアミノ酸などの成分が含まれていますし、苦みのもとになるホップには緑茶の薬効成分として知られるポリフェノール成分も含まれています。

ビール王国といわれるドイツなど、ビールをたくさん飲む習慣のある人たちには、血中に動脈硬化を防ぐ善玉コレステロールの値が高いといわれています。

 

2006年にアメリカのオレゴン州立大学が、マウスを使った実験を行った結果、ビールの材料となるホップの中のポリフェノール成分には、前立腺がんの予防効果があると発表しました。

細胞ががん化するきっかけの一つの「酸化」を防ぐ作用がみられたそうです。

 

日本でも、大手ビールメーカーのキリンビールが、ビールやその原料のがんを抑える効果について、国立がんセンター岡山大学と共同で研究を行っています。

生後5週のラットに「アゾキシメタン(AOM)」という発がん性物質を投与して、ビールを与えるグループと与えないグループに分けて、5週間後に、大腸がんの前がん病変(がんになる前の段階)の数を数えるという実験が行われました。

 

その結果、ビールを与えたグループでは、前がん病変や大腸での腫瘍の形成が少なかったそうです。

この効果を示すビールの量は、人間に換算すると1日780ミリリットルくらいです。

 

また、2017年に国立がんセンターが、飲酒・喫煙習慣と白血病を引き起こす「骨髄異形成症候群」の発症リスクとの関係を調べた結果、ビールを飲むと、この病気リスクが低下することを発表しました。

骨髄異形成症候群とは、骨の中にある骨髄の中でつくられる造血細胞に異常が起こる病気です。

造血細胞に異常があれば、そこから分化していく赤血球、血小板、白血球にも異常が起こり、急性骨髄性白血病を発症しやすくなってしまいます。

 

また、がん研究センターの研究チームは、全国の40~60歳の男女約9万5000人を対象に、最長27年間(平均18年間)にわたって調べたところ、70人が骨髄異形成症候群と診断されました。

飲酒習慣を分析すると、毎日ビールを1リットル程飲んでいる人のリスクは、酒を飲まない人の40パーセント程度低かったのです。

飲酒が白血病のリスクを下げるのは、アルコール自体による免疫力の向上や、ビールのポリフェノール成分の効果ではないかと考えられています。

[su_box title="ホップ"]アサ科のつる性多年草。ビールの苦み、香り、泡に大切な働きをする他、雑菌の繁殖を抑え、ビールの保存性を高める作用がある。[/su_box]

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