兄弟殺しを黙認するワシの子育て法
多くのワシ類は、複数の卵を産むときも一度に産まず、数日ずらして産む習性があります。
そして、すべての卵を産み終える前に卵を温め始めてしまうので、当然ヒナがかえるのに若干のズレが生じます。
この現象を非同時孵化と言います。
このため、先にかえったヒナが、弟(妹)を攻撃し、ついにはつつき殺してしまうことがよくあります。
アフリカ南部に棲むコシジロワシの場合、200巣のうち複数のヒナが巣立ったのは、わずか一巣のみだったという観測結果さえあるのです。
この兄弟殺しは、イジメやケンカがもとで起こるのですが、驚いたことに、親鳥はそれを止めようともせず、見て見ぬふりをします。
どの子も大きくなってはしいと思うのが親の願いだと思うのですが、なぜ鳥の親は、こんな残酷なことを黙認してしまうのでしょうか。
この理由には諸説ありますが、最も有力なのは、下のヒナは上のヒナが死んだときの”保険”だというもの。
つまり、ヒナ同士の体力が同じだとえさの恵まれない年には、少ないえさの奪い合いで共倒れになりかねません。
そこで、えさ不足の年でも最低限のヒナの生存を保障するため、どちらかが犠牲になる必要が生じ、非同時孵化が必要となるのです。
たとえ弱いヒナが殺されても一羽が元気に育てば、親にとってはそれでいいというわけです。
私たち人間の感情では推し測れないこのシステムも、鳥たちにはどうしても必要な手段なのかもしれません。