福神漬けの「福神」は弁天様のこと

福神漬けの起源を語るものとして、こんな面白い話があります。

江戸時代、ある借金だらけの男が明日の生活にも困ってボンヤリ河原を歩いてると、上流からナスやキュウリがたくさん流れてきます。

ちょうどその日はお盆で、上流の農家が供養のために流した野菜でした。

男はその野菜を集めてしょう油に漬け込み、江戸に持って行って売ると、飛ぶように売れました。

男はこれをきっかけに漬物屋を始めますが。川から野菜が流れてきたのは神の助けとばかりに、この漬物を福神漬けと名付けました。

・・・というまったく調子のいい話ですが、本当でしょうか。

実は、この話から「福神漬け」と名付けられたというのはウソ。

漬物の老舗「酒悦」が明治18年につくったものが、福神漬けの元祖です。

福神漬けを考案したのは野田清右衛門という人で、借金で首が回らなかったわけでも、お盆の川流れを拾ったわけでもないそうです。

香煎(穀類を煎った粉)を売っていたのですが、もうちょっと商売を拡大しようと漬物を考案しました。

新製品の漬物を知人に試食してもらってネーミングを頼んだら、店が上野なので不忍池の弁天様にちなんで福神漬けと命名し、弁天様は七福神のうちの一人だから材料も七種類にするとよい、という返事をもらいました。

福神漬けというのは、「七福神漬け」だったのです。

そして、その正式な七種類の野菜とは、ナス・レンコン・シソ・ウリ・カブ・ダイコン・ナタマメです。

このうちのどれかが欠けていても、また、ほかのものが入っていても、福神漬けとはいいません。