古代ギリシャは熱い料理を手で食べるのが礼儀
フォークが食卓に登場するのは意外に最近のことで、17世紀に入ってからです。
箸のほうは3000年もの歴史を持つというのに、あんな単純な道具が出てくるまでに、これほど時間がかかるとは驚きです。
それ以前は、どんなに美しくて上品な貴婦人でも、手づかみでものを食べていました。
古代ギリシャ時代もやはり手で食べていましたが、この時代に客をもてなすのに、料理はできるだけ熱いうちに出すよう心がけるのが礼儀とされていました。
大食漢が、ほかの人が熱くて手を出せないでいるうちにたらふく食べてしまおうと、毎日熱湯に手を浸して指を鍛えていた、という逸話も残っています。
ある猫舌の人は、熱くても食べられるようにと舌を守る器具・タングガードをつくり、それをはめていきなりほおばったら舌はやけどしなかったものの、上あごに大やけどをしたそうです。
それほどみんなが苦労するなら、いっそ手でつかめるくらいに冷めた料理を出せばいいのにと思うのですが、礼儀とか義理というものは、いつの時代も一筋縄にはいかないもののようです。