家電なのに、もともと野外で使われていたものって?
今では当たり前のように使っている「家電」も、発明当初は家で使うものではなかった、という面白い話があります。
ろ過器のついた電気掃除機は、1901年にイギリス人技師ヒューバート。ブースが考案したもの。
それ以前は、じゅうたんのホコリ取りはやっかいな仕事でした。
当時すでに、電動ではありませんが、じゅうたん用の掃除機が普及しており、ホコリを風で飛ばす方法と、ふいご(空気ポンプ)をまわしてホコリを吸入する2つのタイプがありました。
原理的には、ただホコリを舞い上がらせるだけの前者より後者のほうがずっと優れているのですが、吸入タイプには、ホコリをろ過する方法に問題がありました。
後者は水でろ過する方法を採っていたのですが、かなり大がかりなのです。
ホコリを吸い取るだけでも、ふいごをまわす者とじゅうたんに掃除機を転がす者の2人の召使が必要だというのに、これ以上大がかりなものとなれば、普通の家庭ではとても使えるようなものではなくなってしまいます。
そこで実用的な掃除機を発明したのが、橋の設計技師ヒューバート・ブース。
彼がロンドンのセントパンクラス駅の前を通りかかると、小型電気モーターを使った最新式掃除機のデモンストレーションが行われていました。
この掃除機は列車の車室用のもので、ホコリを吹き飛ばすタイプでした。
「ホコリは吸い取った方がいいんじゃないか?」と彼が尋ねると、「それはそうだが、ホコリのろ過がうまくいかなくて、とても実用にならない」という返事でした。
彼は、家に帰るとじゅうたんの上にかがみ、ハンカチを口に当てて思いっきり息を吸い込んでみました。
すると、ホコリはハンカチにつきます。
それで、彼は布でろ過することを思いつきました。
今の私たちにすれば、布でこして取るなんて誰でも考えつきそうなことですが、当時としては、素晴らしいひらめきだったようです。
初期の電気掃除機は現在のものからすればひどく大きく、道路に置いて240メートルもあるホースで室内のホコリを吸い取るというものでした。
音もかなりのもので、ときどき、驚いた馬が暴走して交通事故を起こしていたそうです。
ちなみに、ブースは本職の設計士としても有名で、映画「第三の男」に出てくるウィーンの橋をはじめ、有名な橋をいくつか設計しています。