なぜ昆布は採れない沖縄で大量消費されるのか?
沖縄料理で多いイリチー(炒め煮)のなかにクーブイリチーがあります。
「クーブ」は昆布のことです。
クーブイリチーは豚バラ肉と昆布の炒め煮です。
それ以外にも、沖縄では豚肉と昆布を組合わせた料理が多くあります。
豚の骨付きあばら肉(スペアリブ)=ソーキをのせた名物ソーキそばも昆布とかつおぶしでだしをとりますし、煮込んだ昆布をトッピングすることもあります。
沖縄は長らく、昆布の消費量(1人当たり)が全国トップでした。
昆布は寒流の親潮が流れる海で育つ海藻ですから、沖縄ではまったく採れません。
それなのに、昆布をたくさん消費する食文化が根付いたのは、ある歴史的背景があったからです。
沖縄ではだしをとるというよりは、昆布そのものを食べることのほうが多いのです。
琉球王国は1600年に薩摩によって占領され、中国や他のアジア諸国との貿易基地となっていました。
そして、琉球から中国へ輸出される目玉商品の一つとして昆布が加わりました。
薩摩は琉球で作った砂糖を昆布と換え、その昆布を中国に運び漢方薬などの中国商品を手に入れるという貿易差益で儲けていたのです。
この貿易の中で、時には仕入れすぎて余った昆布や商品にならないような不良品の昆布もたくさん出てきました。
そこで、こうした昆布が、琉球の庶民に安い値段で供給されたと考えることもできます。
こうして沖縄で昆布を食材にする食文化が生まれた結果、食物繊維などが豊富な昆布は、沖縄の人たちの健康と長寿を支える一要素になっていったのではないでしょうか。
しかし近年、沖縄の昆布消費量は落ち込んでいます。
それに呼応するかのように、以前はトップを独走していた沖縄男性の平均寿命も下降してしまいました。
なぜ昆布が採れない沖縄にこの地名があるのか、考えれば考えるほど謎が深まります。
昔、中国へ昆布を輸出する港があったからではないかとか、集落がくぼ地にあることからくぼ地を意味する琉球語の「クブンジ」が昆布の「クーブ」に近いからその漢字を当てたのではないかとか、昆布に似た海藻が採れていたからとかいわれています。
いずれにしても、沖縄の人たちの生活は、いまなお昆布と切り離すことができないということでしょう。
[surfing_su_box_ex title="琉球王国"]
1429年から1879年の450年間、沖縄諸島と奄美諸島、先島諸島に存在した王国で、正しくは琉球国。
勢力図は最大でも総人口17万人に満たない小さな王国だったが、日本の鎖国時代に中継貿易として重要な役割を果たしながら、独自の文化を築き上げた。
[/surfing_su_box_ex]