昔、納豆は豆腐、豆腐は納豆と呼ばれていた。
「五月の肩凝り納豆月」という言葉があります。
旧暦の五月といえば新暦では六月、田植えの季節です。
農家にとっては最も忙しい時期で、疲れもひとしおでしょう。
これは、肩が凝り、疲れ切った身体をいたわるには納豆がいちばん、ということを表した生活の知恵です。
大豆を煮てそれをワラに包み、納豆菌を加えて一種の腐敗作用を行わせる。
そうして、高い栄養価を損なうことなく保存食にしたのが納豆です。
しかもこれは、体に100%消化・吸収される理想の食品でもあります。
この納豆の始まりは、貧しい農家で大豆をワラに包んで大事に保存しておいたのが腐ってしまい、捨てるに捨てきれず口にしたところ、「食べられる!」と知った、そんなところにあるのではないか、と考えられます。
ところで、同じ大豆で作られたものに豆腐がありますが、こちらは大豆を煮込んだ汁にニガリを入れて固まらせてつくります。
納豆と豆腐の製法を比べてみて「おや?」と思いませんか?
「納める」という言葉に、「物事を整った形にする」という意味があると言えば、もうお気づきでしょう。
腐らせたほうが納豆で、豆の汁から個体に納めるのが豆腐・・・明らかに名前が逆です。
語源を研究している人によると、もともとは納豆を豆腐と言い、豆腐を納豆と言っていたのが、「ねっとり」と「なっとう」の語感が似ていることもあり、いつの間にか呼び方が入れ替わってしまったのだろう、ということです。