オランウータンにも「おやじ臭」がある?
男性が中年になってくると「おやじ臭」「加齢臭」などといわれる臭いが目立つようになります。
これに若い女性は敏感に反応することが多いです。
父親が、思春期の娘から突然「お父さん、臭いよ。」などと言われ、距離を置かれ始めたりするのはそのせいです。
中には母親に「私の下着とお父さんの着ているものを一緒に洗わないで」と言い出する娘もいるし、父親と娘の間で何年も口をきかないという家庭も出てきます。
ところが、霊長類の中でも人間にとても近いといわれるオランウータンには、これとよく似た現象が見られるそうです。
オランウータンは一夫多妻の家庭をつくり、一匹の強い雄が父親になって一族が群れで生活します。
しかし、たくさんいる娘たちはその父親に近づこうとしません。
その原因は、父親の放つ“すごい臭い”なのだといます。
オランウータンはもともと独特の強い臭いをもっています。
研究者が森に入ってオランウータンを探す際は、その臭いを手がかりにするくらいです。
中でも雄のオランウータンの「おやじ臭」はものすごいようです。
しかし実は、このオランウータンの強い「おやじ臭」は父親と娘の間で近親相姦が起こらないようにする仕組みなのです。
近親相姦の結果、生まれてくる子供に異常が生じたりするリスクがあることはよく知られていますが、それを避ける自然の仕組みもそなわっているというわけです。
人間同士でどんな他人の匂いにひかれるか、あるいは不快に感じるかを調べた実験があります。
数人の若い男性が何日か着ていたアンダーシャツを無作為に並べておき、同じく数人の若い女性たちにそのシャツの匂いを嗅いでもらいました。
すると、遺伝子的に遠い「赤の他人」の男性が着ていたシャツは「いい匂い」と感じ、家族や親族など遺伝子が近い男性のシャツは「嫌な臭い」と感じるという結果が出たそうです。
つまり、人間の体臭の好みにも、近親相姦が起きないような仕組みがあるのかも知れません。
人間もオランウータンも、父親が年頃の娘から避けられるのはむしろ正常なことなのです。
[surfing_su_box_ex title="近親相姦"]近い親族関係にある者同士による性行為。[/surfing_su_box_ex]