ズボンの折り返しが「下品」と思われていた

「見かけで人を判断するな」と言われますが、逆もまた真なりで、人間社会で服装が持つ説得力はなかなか無視できません。

特に欧米人には、服装からその人の教養、趣味、育ちの良さ、経済力、才能、信用などを読み取る習慣が根強く残っていて、有能なビジネスマンほど着るものに神経を使っているそうです。

そんな服装への厳しい眼差しにまつわる話が、ズボンに関して残されています。

かつては、ズボンの裾はダブルに折り返したものが正統とされていました。

元々ストレートだったズボンの裾をわざわざ折り返したのは、ビクトリア朝の頃のイギリス紳士たちだったと言われています。

それにはきちんとした理由があって、当時のイギリスの道は舗装されておらず、泥が跳ねて汚れるのを避けるために裾を折り返していました。

それがいつの間にか習慣化し、イギリス紳士の基本スタイルになったというわけです。

日本にも、そのスタイルがそのまま輸入されました。

ところがつ当のイギリスでは、ズボンを折り返している人は「何だ、下品な奴だ」と見られていたというのです。

なぜかと言うと、当時の紳士たちはすべてが召使い任せ。

当然ズボンの折り返しもやらせていました。

そこで「いくら紳士といえども、そこまで召使いにやらせるのは、やりすぎだ。人をこき使う下品な奴だ。」とみなされていたらしいのです。

ちょっとした細かいところにも厳しい目を光らせる―服装で人を見るということは、こういうことなのです。