なぜ自殺するまで仕事を辞められないの?

2016年のOECD経済協力開発機構)の調査によると、日本人の年間労働時間は1713時間で、38ヵ国中22位でした。

38ヵ国の平均が1763時間なので、日本人が特別働きすぎ、というわけでもなさそうです。

 

それなのに、海外メディアからは「日本人は働きすぎで、過労死さえするほどだ」と驚きをもって指摘されています。

新聞や雑誌の記事の見出しに「Karoshi」というローマ字表記が踊るほど、もはや「過労死」という言葉は、海外にまで浸透しつつあります。

 

しかし近年は、中国が「過労死大国」になったといいます。

 

中国では、年間60万人もの人が過労死をしていると政府系の「人民網日本語版」が伝えたのです。

これに対して、日本の過労死・過労自殺者(未遂も含む)は、2017年は191人(厚生労働省)です。

実際には、この10倍くらいの人が亡くなっているはずという見方もありますが。

 

近年の傾向は、20代、30代の若い社員の過労自殺が急増しているといいます。

 

その理由は、企業に余裕がないため、新人、若手といえども即戦力とし、経験とスキルに見合わない、重要な仕事を任せることが多くなってきているからだといわれています。

そして、真面目な人ほど、「期待に応えて、何とか結果を出そう」となり、必然的に残業時間が増えていきます。

 

若者がこうした長時間労働から逃げれない理由は、何でしょうか。

 

一つは、会社を辞めることが「不安だ」ということです。

まだ入社して日が浅いため、退職金は微々たるもの。

失業保険手当も3ヶ月までしかもらえません。

では、その後・・・と考えると、簡単に仕事を手放せないのです。

 

しかし、50代ならともかく、若さそれだけで大きな武器になります。

いろいろな可能性を秘めていることを忘れてはいけません。

 

2つ目は「『石の上にも3年』というくらいだし、もう少し耐えてみよう」と、限界値を自分でずるずると引き延ばしてしまうことです。

 

だがこれも、賢明な判断と言い難いです。

3年耐えて状況が改善する保証は何もないし、その間も心とからだには無理が重なっていきます。

現代は転職しながらスキルアップを重ねていくことは、もはや常識です。

いまの職場環境が合わないなら、ずるずると判断を延ばさずに、より働きやすい会社に、活躍の場を求めるべきです。

 

3つ目は、責任感が強い人に多いのですが、自分が辞めれば周りの人に「迷惑をかける」と考えて辞められないケースです。

しかし、組織というのは、たとえトップが突然辞めても大丈夫なようになっています。

日本の国政で、一番重要なポストといえば総理大臣ですが、突然辞任しても国内の政治、経済は動きを止めません。

辞任した翌日も、ちゃんと動いていきます。

 

4つ目に、同期の人が我慢しているのに「自分だけ弱音を吐くわけにはいかない」ということもあります。

他人と比較して自分を責めると、ますます追い込まれてしまうのに、です。

 

政府も「働き方改革」など、長時間労働対策や労働人口の確保に本腰を入れて取り組む姿勢を見せてはいますが、結果が出るまでには時間がかかるでしょう。

 

結局、日本の企業風土の中では、自分で身を守るという意識をしっかり持つしかありません。

日々長時間労働をしている人は、いろいろ思い悩む前に、一度心療内科のカウンセリングを受けてみるといいでしょう。

そして、いまの仕事が本当に自分にとって天職といえるのかどうか、冷静になって考えてみることも大切です。

[surfing_su_box_ex title="働き方改革"]少子高齢化により労働人口が著しく減少していることや、労働環境の改善に対する社会的機運の高まりを背景に「一億総活躍社会」の実現に向け、政府が掲げている取り組み。具体的な課題として、長時間労働の是正、非正規社員と正社員の格差是正、高齢者の就労促進による労働人口の維持などが挙げられている。[/surfing_su_box_ex]

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