薬じゃないのになぜ「薬味」と呼ぶの?
私たちは、そばやうどんを食べるときに、「薬味」と言って、ワサビやシソ、ネギ、ニラなどを添えます。
これは味を引きしめるためと、栄養的なバランスをとるための二つの役割があり、生活の知恵が生み出した習慣です。
薬とはまったく関係がないのに、これらを薬味というのは、昔はこれが薬物として扱われていたことによります。
実は、コショウやカルダモン、ジンジャー、チョウジ、ベイリーフ、タイム、パセリなど、いわゆるスパイスと呼ばれるもののほとんどが、薬として、あるいは薬の原料として珍重されてきました。
たとえば、コショウは消化器系の病気に、チョウジは解熱に、カルダモンは頭痛や風邪に、ニンニクは疲労回復や強壮強精に、それぞれ効能があると考えられていました。
ラベンダーやミント、フェンネル、バジルなどのハーブ(香草)同様です。
香りがいいので香辛料として使われていますが、やはり、薬物として栽培されたのが始まりでした。
そういう薬物を食べ物に添えるようになったのは、本来は味のためだけでなく、食事で病気を治療したり、予防したりしようとしたからかもしれません。
だからこそ、薬の材料を意味する薬味という言葉がそのまま残されたのでしょう。