イワシは7回洗うとタイに化ける?
イワシは、近年「大衆魚」といわれてきましたが、江戸時代は「下魚」扱いで、主に畑の肥料にされていました。
しかし、イワシのおいしさは知れ渡っていたようです。
嘘か真か、江戸時代の説話に源氏物語の作者・紫式部とイワシのことが書かれています。
式部がイワシを食べているところへ夫が帰ってきて「卑しいものを食べて・・・」と言いました。
式部は「日のもとにはやらせ給ふ いはし水 まいらぬ人は あらじとぞ思う」と歌で返しました。
「いはし水」は岩清水八幡と「イワシ」をかけています。
日本中、イワシをおいしいと思わない人はいない、と言ったのです。
瀬戸内海沿岸、とくに広島県では「イワシは七度洗うとタイの味」との言い伝えがあります。
この地域は、名物の小イワシを手開きして、刺し身で食べる習慣があります。
イワシをよく水洗いすると生臭さが取れて、タイのような味がするというわけです。
しかし、実際に味そのものは、イワシはイワシ、タイはタイで、誰でもがその違いは分かるはずです。
いくら洗っても、イワシがタイに化けることはありません。
昔からタイは高級魚で、庶民にとって高嶺の花でした。
ゆえに、それに負けじと、イワシをおいしく食べる工夫をしたのです。
「イワシだって捨てたもんじゃない」と、庶民の精一杯の強がりが「鰯は七度洗うと鯛の味」の真意でしょう。
かつて「安い魚」だったイワシですが、近年は必ずしも安くありません。
流通の発達で鮮度の高いものが入手しやすくなりましたし、動脈硬化予防に役立つといわれるDHAも多いことが知られるようになえい、いまではタイに劣らないほどの人気を集める魚になっています。
[surfing_su_box_ex title="DHA"]ドコサヘキサエン酸。イワシ、アジ、サバなど背中の青い魚に多く含まれる不飽和脂肪酸。1980年代の後半に、人間の脳や網膜などの神経系に豊富に含まれていることで注目され始めた。[/surfing_su_box_ex]